第4章 アジャイル開発と偽装請負1 アジャイル開発における密なコミュニケーション アジャイル開発は、ユーザの要望を反映した、ユーザにとって真に価値のあるプロダクトを開発するためのものであり、既に述べてきたとおり、プロダクトオーナーが管理するプロダクトバックログに基づいて開発対象を決め、ユーザのフィードバックを得ながら改善や機能追加を行う。また、アジャイル開発では、個々の案件やスクラムチームに合わせて、よりよい開発の進め方を常に模索することが推奨されており、スプリントレトロスペクティブ(スプリントでの活動のふりかえり)などの機会に開発の進め方について議論するなどして、自律的に改善を行っていくことが想定されている。 このことから、ユーザが要求事項の内容や詳細を開発担当者に伝えたり、開発担当者間で開発手法について議論したりする必要があり、開発担当者とユーザ、開発担当者間での密なコミュニケーションは、アジャイル開発にとって非常に重要といえる。 こうした密なコミュニケーションは、内製であれば問題はないが、ユーザが開発を外部ベンダに委託し、開発チームの全体や一部を外部ベンダの人員が担当する場合には、いわゆる偽装請負が問題となり得る。2 偽装請負とは 偽装請負とは、形式上は請負や準委任など、労働者派遣契約以外の契約を締結しておきながら、実態としては発注者が受注者の雇用する労働者に対して直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合をいう(なお、偽装「請負」と呼ばれているが、請負に限らず、準委任その他の業務委託契約も対象となることに注意されたい。)。これはすなわち、自らが雇用する労働者を第三者に使用(指揮命令)させる場合には、労働者派遣制度を用いなければならない、ということを意味する。 形式的には請負契約や準委任契約を締結していても、偽装請負と評価される場合には、発注者、受注者、受注者の労働者の関係は、労働者派遣法2条100第1 いわゆる偽装請負とそのペナルティ
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