ア開発
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1 鎌田耕一=諏訪康雄編著 山川隆一=橋本陽子=竹内(奥野)寿著『労働者派遣法 第4章 アジャイル開発と偽装請負であり、派遣労働者が派遣先(発注者)に対して当該申込みを承諾する旨の意思表示をしたときは、派遣先(発注者)は当該労働者を雇用しなければならないことになる。偽装請負の場合、労働者派遣法や労働基準法等の規定の適用を免れる目的(脱法の意図)で、労働者派遣契約以外の名目で契約が締結された場合に、このみなし制度が適用され得る(同法40条の6第1項5号)。このような目的が要件として特に付加されていることからすれば、客観的に偽装請負の状態が生じたというだけでは同号は適用されない。しかし、積極的な脱法の意図が指示や発言の形で外部に示されていた場合や、明らかに指揮命令と評価できる関与が日常的・組織的に行われ、そのことを会社上層部も認識・認容していた場合、また、正式な契約書以外に、実態として労働者派遣であることを裏付ける覚書等の文書がある場合等には脱法の意図が推認され得る1。第2版』(三省堂、2022)341頁  なお、脱法の意図について、東京地判令和2年6月11日労判1233号26頁は、「労働者派遣法40条の6第1項5号が、同号の成立に、派遣先(発注者)において労働者派遣法等の規定の適用を「免れる目的」があることを要することとしたのは、同項の違反行為のうち、同項5号の違反に関しては、派遣先において、区分基準告示の解釈が困難である場合があり、客観的に違反行為があるというだけでは、派遣先にその責めを負わせることが公平を欠く場合があるからであると解される。そうすると、労働者派遣の役務提供を受けていること、すなわち、自らの指揮命令により役務の提供を受けていることや、労働者派遣以外の形式で契約をしていることから、派遣先において直ちに同項5号の「免れる目的」があることを推認することはできないと考えられる」とする。  また、大阪高判令和3年11月4日労判1253号60頁は、(労働者派遣法40条の6第1項5号に)「偽装請負等の目的という主観的要件が特に付加された趣旨に照らし、偽装請負等の状態が発生したというだけで、直ちに偽装請負等の目的があったことを推認することは相当ではない。しかしながら、日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、労働者派遣の役務の提供を受けている法人の代表者又は当該労働者派遣の役務に関する契約の契約締結権限を有する者は、偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認するのが相当である」とする。102

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