ア開発
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はしがき 本書は、アジャイル開発について、法律実務家から見た論点やその考え方についてまとめたものです。 筆者は、これまで二度にわたり(一度目は2010年10月から2013年3月まで、二度目は2019年4月から2022年3月まで)、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)において、アジャイル開発を外部委託する際のモデル契約を策定するプロジェクト・チームやワーキング・グループに専門委員として関与しました。本書では、そうした活動の中で得た知見を基礎として、アジャイル開発の法務に関する論点をピックアップし、検討を試みています。 アジャイル開発に関しては、法務的な観点から検討を要する点は少なくないにもかかわらず、アジャイル開発の法務を中心に取り上げた日本語の書籍は、これまで見当たりませんでした。 その理由として考えられるのは、①アジャイル開発といっても様々な手法があり、開発実務の運用も多様であるため、そもそも議論の対象とする手法や実務をどう把握すべきか悩ましい、②アジャイル開発に関して公表されているトラブル事例や裁判例が少なく、現実にどのようなことが問題となるのか、必ずしも明らかでないといった点です。上記のIPAのモデル契約の策定にあたっても、こうした点は悩みの種でした。 本書では、これらのうち①について、アジャイル開発で最もよく使われているフレームワークであり、IPAのモデル契約が前提としている「スクラム」を取り上げることとしました。そして、開発実務については、公表されている資料・文献を参照し、いくつかの重要なポイントについては、第一線でアジャイル開発実務に携わっている方々から直接アドバイスをいただき、可能な限り、現在の比較的メジャーな実務の運用を反映するように努めました。 また、②については、法務面から理論的に問題となりうる点を検討するに■は し が き

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