4 進め方指針に記載されている内容について、契約上の義務と解釈される可能性も完全第1 IPAモデル契約の活用方法明示的に再度の認識合わせを行い、進め方に関する両当事者の認識に齟齬を生じさせないようにするためである。これにより、当該指針は、契約を解釈する際に当事者の合理的な意思を推測させるものとして機能する。すなわち、進め方に関連して生じた両当事者間のトラブルが、問題解消手続で解決せずに紛争に発展した場合には、契約書本体及び別紙の記載と併せて、当該指針が進め方に関する当事者の意思を合理的に解釈するための指針としても機能することになる」と説明されている。 アジャイル開発のトラブルが開発の進め方に関連して生じたような場合、例えば、開発チームが開発した機能について、ユーザのレビューを受けないまま開発を進め、ユーザが想定したものと異なるプロダクトができたようなケースがあったとして、(例えば前記のプロジェクトマネジメント義務違反との関係で)契約上どのような進め方が想定されていたのか争いとなる場合等には、契約から参照されている進め方指針の内容が意思解釈の一つの根拠になると考えられる。 IPAモデル契約としては、「指針として参照する」という文言をこのような趣旨で用いているが、一般的に用いられる契約文言ではないことから、紛争時に裁判所においてどのように解釈されるか、完全に予測できるわけではない4。その点を懸念し、契約条項として含めることに躊躇する場合もあるだろう。そのような場合には、後述するとおり、進め方指針の参照を定めた2条6項を削除することも考えられる(144頁参照)。もっとも、そのような場合でも、当事者が想定する開発プロセスを明確化し、かつ前記のような偽装請負の疑義を避けるためには、ユーザとベンダとの間で、具体的な開発の進め方について共通認識を得るための文書を作成しておくことが推奨される。(3)契約前チェックリスト 契約前チェックリストについては、24頁以下で紹介したとおりである。には否定できない。135
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