国相
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3 国際的な相続手続 日本では,相続人や受遺者が遺産分割手続や遺言の執行を円満に進めることができるなら,裁判所の関与は必要ではありません。 もっとも,自筆証書遺言が残っている場合には,家庭裁判所における遺言の検認が必要となります。被相続人に多額の負債がある場合,その負債の承継を免れるためには,家庭裁判所に相続放棄の申述をすることが必要となります。また,相続人が円満に話し合って合意できない場合,遺産分割のために家庭裁判所に調停や審判の申立てが必要です。遺言の有効性が争われる場合や,遺留分について争われる場合は,調停の申立てや地方裁判所への訴訟提起がなされます。 国際相続では,これらの手続を日本の裁判所で進められるのか,すなわち日本の裁判所が国際裁判管轄を有しているのかが問題となります。日本の民事訴訟法や家事事件手続法には国際裁判管轄に関する規定がありますので(民事訴訟法3条の2,3条の3,家事事件手続法3条の11),この規定に基づいて国際裁判管轄の有無が判断されます。 一方,外国の裁判所が国際裁判管轄を有するかどうかは,当該外国の法律を確認する必要があります。ア 準拠法の考え方 日本で国際相続の手続を進める場合,日本の相続法が適用されるのか,それとも外国の相続法が適用されるのかが問題となります。このような国境を越える法律関係(「国際的私法生活関係」などと呼ばれます)に,どの国の法律を適用するかを決定するルールを国際私法(International Private Law)と呼びます。抵触法(Conflict of Laws)と呼ぶ国・地域もあります。 日本では「法の適用に関する通則法」(以下本書では「通則法」といいます)が主要な国際私法となります。通則法36条は「相続は,被相続人の本国法に⑴ 国際裁判管轄の問題(Q9参照)⑵ 国際私法の問題4第1 国際相続はなぜ複雑なのか

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