5 国際的な所得税申告手続式を「相続税方式」,被相続人や相続財団が主たる納税義務者となる方式を「遺産税方式」と呼びます。 日本の相続税法には,相続税と贈与税の納税義務者と課税対象,税額の算出方法などが定められています。日本だけでなく全世界にある遺産が課税対象となる相続人を無制限納税義務者といい,日本にある遺産だけが課税対象となる相続人を制限納税義務者といいます。 外国の相続税や遺産税については,当該外国の税法が,納税義務者と課税対象,税額の算出方法などを定めています。日本人や日本居住者でも,外国の相続税・遺産税の納税義務者に該当すれば,外国で相続税・遺産税が課税されることになります。 各国がそれぞれの徴税権に基づいて課税する場合,同じ遺産について日本と外国で重ねて納税義務を負うこともあります。このような二重課税による加重な税負担を軽減するため,各国は,外国税額控除や租税条約などによって二重課税を回避し,人や資産の国際的な移動を阻害しないようにしています。日本はアメリカとのみ相続税・遺産税・贈与税に関する租税条約を締結しています。 日本の所得税法には,所得税の納税義務者と課税対象,所得税額の算出方法などが定められています。日本居住者は基本的に日本だけでなく全世界における所得が課税対象となり,日本非居住者は日本における所得だけが課税対象となります。納税義務者の区分が相続税と異なりますので注意が必要です。⑵ 日本の相続税(Q33~38参照)⑶ 外国の相続税・遺産税(アメリカの遺産税についてQ39~42参照)⑷ 二重課税の回避(Q34,73参照)⑴ 日本の所得税申告6第1 国際相続はなぜ複雑なのか
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