Q遺分
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8審判が申し立てられた家庭裁判所には,調停事件の管轄もある場合を前提にしています。当初から話合いによる解決を諦めているという理由以外に,審判で申し立てることの理由とされるのは,例えば,相続開始地が東京である場合に,相手方は東京に住所地がなく,調停事件の管轄がないことから,東京に住む申立人や事務所のある手続代理人弁護士が,東京家庭裁判所に審判で申し立てるというものです。しかし,このような場合に審判で申し立てられても,自庁での調停(自庁処理)か他庁での調停かはともかくとして,家庭裁判所は,通常,調停に付しています。これは,事実上の調停前置主義といってもよい運用です。遺産分割事件で事実上の調停前置主義が取られているのは,親族間の紛争であるということに加え,相続人の範囲以外は,遺産の範囲も,遺産の評価も,特別受益や寄与分も,分割の方法も,当事者の間で処理できる,すなわち,合意によって解決できるため,まず話合いを行うことがふさわしいからです。実際,審判で申し立てられた事件を調停に付しても,当事者や手続代理人から異議が出ることはほとんどありません。3 自庁で調停を行う場合(自庁処理)⑴ 自庁処理とは,当該申立ての管轄がない場合でも,申立てのあった家庭裁判所で調停を行うことが適切な場合に,当該家庭裁判所が自ら処理することをいいます(家事法9条1項ただし書,274条3項)。自庁処理の裁判に対しては,即時抗告ができませんが(家事法9条1項・3項),相手方等当事者に移送の申立てをする機会を確保するため,事前に意見を聴くことになります(家事規則8条1項)。相手方から,自庁処理に関する回答書に,「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で行うことを希望する」との回答がされた場合や,別途移送の申立てがされた場合には,家庭裁判所は,移送の可否について検討します。⑵ 調停に付す場合,相手方からも意見を聴取することになりますが,調停に付すこと自体についてだけでなく,上記の例でいえば,当事者に東京家庭裁判所か,それとも相手方の住所地にある家庭裁判所での調停を希

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