令遺言
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2  基礎編─遺言を作成するに当たっての留意点 しかしながら,残った親が死亡すると(二次相続),相続人である子らの意見が対立することがあります。その際,子の誰が(一次相続後に)残った親の介護をしたかという問題(寄与分等)にもなります。 また,これらの争いに相続人(子ら)の配偶者が,口を挟み,参加(参戦)するようになると,益々争いが混迷を深めます。何年も遺産相続をめぐる骨肉の争いが続き,仲が良かったきょうだいであっても,親の相続を機に仲違いしてしまうことも少なくなく,これは,まさしく相続が生んだ悲劇とも言うべき結果です。 ゆえに,遺言を作成しておけば,相当程度紛争の発生を防ぐことができます。「交差型(たすき掛け)遺言」と予備的遺言の必要性─子どものいない夫婦の場合 子どものいない夫婦の場合,夫が「(夫が先に死亡したときには)全ての財産を妻に相続させる」旨の遺言を作成することが考えられます。しかし,このような遺言を作成していても,妻が先に死亡してしまった場合(同時死亡も同じ)には,遺言は効力を持たなくなってしまいます。その場合,夫は,妻死亡後に改めて遺言を作り直せばよいのですが,常に遺言の書換えができるというわけではありません。妻に先立たれたという悲しみの中で,妻から相続した財産を含めて,将来,夫の財産を誰に,どのように譲るか(与えるか)ということを冷静に判断することが難しいこともあります。 そのため,遺言を変更(書換え)することなく死亡してしまうと,その相続は法定相続となりますので,夫の相続人(きょうだいなど)による遺産分割協議を要することが多くなってしまいます。 そこで,遺産分割による紛糾を避けるため,自身が先に死亡する場合だけでなく,妻が先に死亡する場合も考慮に入れて,予備的に,(夫が妻から相続した遺産を含めて)全財産を誰に,どのように相続させるかということを決めておくことが考えられます。これを「予備的遺言」あるいは「補充遺言」と呼びます。

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