令遺言
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column1 物語の概要 400年以上前に活躍したイギリスのシェークスピアには様々な作品(戯曲)がありますが,4大悲劇の一つとして「リア王」が挙げられます。この話の概要は,老境に達したリア(ブリテン国)王が引退を決意し,3人の娘(ゴネリル,リーガン,コーディリア)に王国を三分して与えようとしますが,父王は,そのときに,自身に対する孝行や愛情を口で表現するよう求めました。姉2人は,王国欲しさに父王に心にもない甘言を口にします。三女コーディリアは父王を大切に思っていましたが,その真意を言葉で表すことはできないとして,父王の要求に逆らい,耳当たりの良いことを言わなかったために,その怒りをかってしまい,王国を分け与えられるどころか,ブリテンから追放されてしまいます。その結果,王国は,姉2人に分け与えられますが,姉2人は,やがて,父王を蔑ろにするようになり,父王は,二人娘からの酷い仕打ちに耐えきれず,流浪の旅に出てしまいます。一方の追放された三女は,フランスに渡り,そこで仏王と結婚しますが,父王の窮地を知り,姉二人の支配する王国と戦いをします。しかし,フランスは敗れ,コーディリアは囚われの身となってしまい,姉の放った刺客により殺害されてしまいます。そして,父王は,コーディリアの遺骸を抱えて狂気のままに死亡するという結末を迎えるという内容です。 王は,王国の財産分けを失敗し,自身と最愛の三女を不幸にしたばかりか,それによって三女の命さえ失わせてしまうという二重,三重の不幸を招いてしまったという悲劇的な顛末を迎えます。2 リア王の悲劇の原因 リア王の失敗の第1は,王が王国を分けようと判断する時期が遅すぎたということです。王の決断がもう少し早く,年齢的に若ければ,もう少し柔軟に判断することができ,姉2人による甘言に騙されることがなかったといえます。王の高齢が王の判断を誤らせ,硬直化させてしまったといえます。王が高齢になるまで権力に固執し,判断の遅れがもたらしたことにあります。 第2に,長女,二女2人からの一時的な甘言に溺れてしまい,三女の真実を訴える声に耳を貸さず,目が曇ってしまっていたことです。孝行や愛情を口で表現することを求める自分の要求や判断基準の甘さや欠点に気づかず,それを娘3人に押しつけようとしたことが悲劇を招いた要因ともいえます。 第3に,三女の真意を理解できず,周囲(忠臣のケント伯爵)からの諫言にも王は耳を傾けなかったことです。王にもう少し周囲からの声を聞く20  基礎編─遺言を作成するに当たっての留意点 リア王の失敗(悲劇)に学ぶ

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