令遺言
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基礎編─遺言を作成するに当たっての留意点  21耳があれば,悲劇は防げたはずです。甘言か,諫言かの区別ができなかったことが失敗の要因です。 第4に,王国を生前に娘二人に分け与えてしまい,後戻りが出できなくなってしまったことです。たとえば,現在の遺言のような方式であれば,撤回もできたのでしょうが,生前贈与を選択し,娘二人に王国を分け与えてしまったために,追われてしまう結果になったのです。王は生前贈与を選択することにより,王国を娘らに任せて,娘から大切にされて余生を過ごしたいとの夢を持ったのかもしれませんが,それが失敗の原因でした。 「リア王」の悲劇は,現代社会にも通じますし,誰でも容易に理解しやすい内容です。本書の読者の中でも,遺言の作成や財産の生前贈与を検討されている人がいると思いますが,「リア王の悲劇」を生まないように,その後継者や財産の分け方について慎重に,かつ適切な時期にその判断をしていただくための「他山の石」として参考にしていただきたいと思います。       コラムのような失敗を起こさないためにも自分の遺産をめぐる紛争を避けることを考えましょう。(生前贈与を含めて)自身の相続を考えるに当たっては,できるだけ元気なときに,冷静になって,行く末を見据えて判断しましょう。 自身が信頼できる人,あるいは利害関係抜きで助言してもらえる人など,周囲からの助言にも耳を傾けましょう。複雑な事情があったり,身近な人がいない場合,弁護士などの専門家に費用を払ってでもアドバイスを受けた人が客観的にかつ自身のためにもなります。 もし,以前の判断が失敗だ,または状況が変わったのであれば,遺言内容を変更するのも一つの方法です。遺言はいつでも書き換えができますが,これも元気なときに(判断能力があるうちに)書き換える必要があります。後記case32「遺言の書換え」の項も参考にしてください。リア王ゴネリルリーガン亡王妃コーディリアmemomemo

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