5「相続させる」遺言の趣旨と効果(参考)5555555526 第1 夫婦間での遺言を検討する──配偶者への配慮「相続させる」の趣旨 遺言の中で「相続させる」という用語を用いると,次に述べるとおり相続人の相続分を指定し(民法902条),遺産の分割の方法を定めるという法的効果が生ずる場合もあるので有用です。 したがって,遺言者がその相続人に財産を譲る場合には,「相続させる」という表現を用いましょう(※例外的に相続人にも「遺贈する」という表現を用いる場合もあります。)。「相続させる」の効果(遺産分割方法の指定) 「相続させる」と記載した遺言は,相続としての処理と,相続と同時に権利移転の効果を持たせる(その結果,遺産分割手続を省略できます。)という遺言者の2つの意思を満足させることになります。そのため,遺言の記載から,その趣旨が遺贈であることが明らかであるといった特段の事情がない限り,遺贈でなく遺産の分割の方法を定めた遺言であると解されます。 この記載のある遺言があれば,相続人の間の遺産分割手続を経なくても,当然に特定の遺産が被相続人の死亡の時に直ちに特定の相続人に移転する効力があるとしています(最二小判平成3年4月19日民集45巻4号477頁・遺産分割効果説)。 上記判例によると,「相続させる」と記載された遺言は,遺産分割方法の指定がなされたと解するのが原則です。 これに対して特定の相続人に対し財産の一定割合(○分の1など)ないし全てを取得させる内容の遺言は,相続分の指定をしたものと扱われます(民法1046条1項かっこ書)。 「相続分の指定」とは,遺言者が,共同相続人の全部又は一部の者について法定相続分と異なる割合の相続分を遺言で定めるものです。
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