子どものいない夫婦では,互いに「先に死亡した人が生存配偶prologueprologue者に全ての財産を相続させる」旨の遺言を作成する場合が多く見られます。ところで,このような場合,その法定相続人は,夫婦以外に,それぞれのきょうだいがいることが多くあります。本項では,先に死亡した人が生存配偶者に全財産を相続させるという内容の遺言を作成しておけば,それで十分かということを考えてみましょう。28 第1 夫婦間での遺言を検討する──配偶者への配慮2人にはお子さんがいなかったので,お互いに遺言を作り合って,先に死亡した人が生存配偶者に対し全財産を相続させるという内容にしていたらしいの。その後,夫が先に死亡したので,遺言に従い妻が相続したの。それはよくあることだし,夫もそれを望んでいたことだよね。そうしたら,妻も,間もなく後を追うように亡くなってしまったの。その結果,妻の妹が,夫婦の預金や住んでいたマンションなど全財産を相続することになったのよ。そうしたら,夫の親戚が,相続した妻の妹に対し「夫がローンを組んで,ようやく返し終わったマンションなのに,全てを妻の妹だけが相続してしまうのはおかしい。夫側の親戚にも半分は渡すべきだ」と要求をしたらしいの。遺言の内容を工夫しておけば,このようなことになることを防ぐことができたかもしれないのになぁ。case2 お互いに全財産を相続させるcasecase22 どうして揉めてしまったの?法定相続ならそうなってしまうね。夫婦間の交差型(たすき掛け)遺言ハナコとたけしの会話─夫婦相続の「その後」この前,私の知り合いご夫婦が相次いで亡くなってしまったんだけど,亡くなった後で揉めてしまったらしいの。
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