Q&A 実務家のためのYouTube法務の手引き
22/62

⑵ 企業との共同事業⑶ チャンネルの売買⑷ まとめ6序章  そうした規模のYouTuberやVTuberの場合,グッズ化などの共同事業といった話も,珍しくなくなります。YouTuberのイラストが掲載されたキーホルダーやTシャツなどのグッズを,第三者企業と提携して販売する,美容系YouTuberがプロデュースするサプリメントを第三者企業と共同開発して販売する,といった形です。そして,その売上は一定のロジックで分配されることになり,もはや,一般的なネット系企業等と同じような「ビジネス」を行っている,といえます。 また,「属人性」の低いチャンネルの場合,その売買も,ある程度行われています。ある個人が個人として,自分の名前や顔を公開して運営しているチャンネルの場合,売却してその人が出演しなくなるとファンが離れてしまいますが,例えば,「企業が特定の声優をプロデュースして運営しているVTuberチャンネル」,「運営主体が脚本などを作成して運営されているアニメ系YouTubeチャンネル」といったように,運営主体が変わってもチャンネル登録者がそのことに気付きにくい,その意味で「属人性」が低いチャンネルの場合,当該チャンネルは,例えば「売上5000万円,営業利益2000万円」といった「事業」であり,その営業利益の数年分,例えば5000万円といった金額で売買されるケースもあります。その規模のチャンネル売買は,もはや「スモールM&A」と呼ぶべきものでしょう。 そうしたポジションに到達するYouTuberは,もちろん,全体の中でいえば,「一部」です。ただ,前述のとおり,登録者数が100万人を超えるチャンネルは,既に約500個存在します。まだ「趣味」としてYouTube活動を行っている方が,そのポジションに到達する可能性は,決して「ゼロに近い」わけではないのです。 YouTuberやVTuberは,こうした意味で,純粋な「趣味」ではありません。今はまだ「趣味」だとしても,いずれ「職業」や「事業」になり得る,そうなった場合に備えて最初から権利処理等をきちんと行っておくべき,スタートアップ企業に近い存在なのです。

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る