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Ⅰ法律・契約の基礎と、アプリ法務の全体像アプリ事業と法との間には、どのような関係があるでしょうか。契約、知他者の権利を侵害しないために気を付けるべきこと1章2 第1章 アプリ開発前に知っておくべき契約・権利保護の基礎的財産、規制の3つを押さえることで、アプリ法務の全体像が見えてきます。契約書を作ることは必須ではなく、口頭で約束するだけでも契約は成立しますが、実際には契約をしたことの証拠を残すため契約書を作るのが典型的です。しかし、契約条件を一方的に示してそれに同意させる方法でも契約は成立します。アプリ法務の場合、アプリ提供者がユーザーに対して利用規約を示して、ユーザーがそれに「同意」するボタンをタップするなどしてサービスを利用開始したり、アカウントを作成したりするのが典型ですが、そのような明確な「同意」のアクションにより、利用規約に記載された内容で、アプリ提供者とユーザーとの間に契約が成立します(アプリ利用規約について97頁)。契約関係は、ユーザーとの間のものに限られません。アプリの開発業務を委託する場合、開発業者との間で業務委託契約を締結するでしょうし、アプリストア提供者との間では、逆にサービスの利用者としての立場で、デベロッパー向け規約に従う必要があります(デベロッパー向け規約について44頁)。なおこれに関連して、デベロッパー向け規約の内容・アプリ審査の透明性および公正性の向上を図る目的で、デジタルプラットフォーム取引透明化法が施行されました。アプリ提供者が同法を知っておくことで、アプリストア提供者との問題に対処できる可能性が広がります(同法について83頁)。このように、アプリ提供者は、アプリ事業に関係するあらゆる主体との間で契約関係を持つこととなりますので、その内容を理解しリスクをコントロールすることは、事業運営上、非常に重要といえます。アプリ開発前に知っておくべき契約・権利保護の基礎第1 契約の基礎契約は、当事者間にどのような権利・義務を発生させるか、何を遵守する必要があるかをお互いに合意した場合に成立します。契約に違反した場合には、契約を解除され関係を継続できなくなったり、損害賠償の請求をされたりします。このような形で、法的な拘束力が生じる点がポイントです。

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