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Ⅱ 知的財産権の保護 51 著作権法違反の罪は通常、被害者からの告訴がなければ処罰されませんが(このような仕組みを親告罪といいます)、著作権法改正により、2018年以降、販売中の漫画や小説本の海賊版を販売する行為および映画の海賊版をネットで配信する行為は、例外的に告訴がなくとも処罰可能となりました。そのため、アプリ開発にあたっては、著作権、特許権、商標権、パブリシティ権などの関係するすべての知的財産権について、第三者の権利を侵害しないよう、事前に調査を行い、必要に応じて第三者から権利の譲渡や許諾を受けることが重要となります。これを実務上は「権利処理」といいます。また、自社が苦労して開発したアプリについて第三者によるフリーライドを防ぐために、自社開発アプリに関して生じた知的財産権を事前かつ早期に権利化することも重要です。このように、知的財産および知的財産権は、アプリサービスを開発する上で避けて通ることのできない重要なテーマです。以下では、アプリ開発により第三者の権利を侵害しないようにするためにはどうすればよいかという観点を中心に、アプリ開発に必要な知的財産および知的財産権の基本的な知識について解説していきます。アプリで使用される画像、音楽、テキスト、プログラム等は、著作権によって保護される著作物に当たります。著作権は、特許や商標と異なり、保護の対象が登録され公表されるものではないため、自社で制作した著作物が他人の著作物に偶然似通ってしまう場合や、外部に画像や音楽の制作を委託した際等に、他人の著作権を侵害していないかどうかを自社で判断することは容易ではない場合があります。仮に他人の著作権を侵害してしまうと、著作権者から使用差止請求や損害賠償請求がなされ、アプリの開発や運営を継続できなくなるおそれがあります。また、著作権侵害を認識して行われた侵害行為は、刑事罰の対象ともなります1。また、こうした請求や処罰を受けずとも、開発したアプリが他人の著作権を侵害しているという事実が露見した場合、SNSでの炎上といった形で自社および開発したアプリのレピュテーションが大きく毀損されるリスクがあります。ビジネス上は、こうしたレピュテーションリスクにも向き合う必要2 著作権⑴ アプリ開発における著作権の重要性

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