3章96 第3章 アプリ利用規約スマートフォンおよびアプリサービスが有するこれらの特徴は、ユーザーのプライバシー侵害に容易につながり得るため、近年、アプリストア各社では、スマートフォンやアプリサービスによって取得される情報の透明化や、トラッキングに際して事前同意を取得するなど、プライバシー保護を強化する方針を打ち出しています(第4章Ⅰ参照)。またアプリサービスでは、アプリストアが提供するアプリ内決済システム(IAP:In-App Purchase)を利用することで、顔認証や指紋認証によるシームレスな決済が可能となるため、課金に対するハードルを下げることができます。他方、ユーザーが決済を強く意識することがないために想定外に高額な課金がなされるトラブルが発生しやすい点や、アプリ内決済時にアプリ提供者が負担する手数料が概ね15%〜30%と、クレジットカード決済等に比べて高額に設定されている点には留意を要します。さらにスマートフォンの場合、幼児や児童でも直感的に操作することが容易であるため、子どもによる利用を想定した対応(ペアレンタルコントロールや利用規約による利用制限)についても意識する必要があります。これらの特徴を持つアプリサービスにおいて、どのような利用規約を定めることが望ましいか、本章ではアプリ利用規約のサンプル条文を含めて解説します。第アプリ利用規約Ⅰアプリ法務において考慮すべきアプリサービスの特徴アプリサービスの場合、ユーザーはスマートフォン等の端末を常時保有するため、いつでもどこでも利用することができます。PCであれば家族等と共有することもありますが、スマートフォン等の端末はもともと携帯電話をベースとしており、1人1台保有することが前提となっているため、端末ベースで個人と紐付きやすい特徴があります。そのため、ターゲティング広告の場合、クッキー等によってブラウザを識別して配信するよりも、スマートフォン(端末)単位で割り振られる広告ID(AAID/IDFA)によって配信する方が一般に精度が高く、アプリサービスの方が、よりパーソナライズされた広告等を配信できるとされています。さらにスマートフォンは基本的に常時オンラインであることや、ユーザーの同意があれば位置情報の取得も可能となることから、ユーザー個人をトラッキング(どこで、どのような行動をしているのかを捕捉)することが容易となります。
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