アプリ
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〇〇年〇〇月〇〇日  制定〇〇年〇〇月〇〇日  改訂〇〇年〇〇月〇〇日最終改訂132 第3章 アプリ利用規約36 外国企業が提供するアプリにおいても、当該外国に所在する裁判所を専属的合意管轄裁判所と定める条項が利用規約に含まれている場合がありますが、ユーザーは、提訴時または利用規約に基づく契約締結時にユーザーの住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に提訴することができます(民事訴訟法3条の4第1項)。37 広島高裁平成9年3月18日決定・判タ962号246号38 仙台高裁平成26年3月14日決定・ウエストロー・ジャパン39 神戸地裁尼崎支部平成23年10月14日決定・判時2133号96号40 名古屋高裁平成28年8月2日決定・判タ1431号105頁法3条の7第5項)。そのため、日本国内の裁判所を専属的合意管轄裁判所とする条項を定めていたとしても、国外に居住するユーザーが当該裁判所に提訴したときか、事業者の当該裁判所への提訴に対してユーザーが当該合意を援用したときでない限り、専属的合意管轄条項は効力を有しないこととなります36。2 ユーザーが国内に居住している場合国内取引における専属的合意管轄条項についても、一定の場合にその効力を否定した裁判例があります。例えば、生命保険契約約款における専属的合意管轄条項について、事業者による専属的合意管轄の主張を信義則により許されないとした事例37、出資契約の約款において東京地裁を専属的合意管轄とする条項があったケースにおいて、専属的との文言にかかわらず付加的な管轄を定めたものと解釈し、消費者の仙台地裁への提訴について東京地裁へ移送しないとの判断をした事例38、外国為替証拠金取引の約款において事業者の本店または支店所在地の管轄裁判所を専属的合意管轄裁判所と定めていたケースにおいても付加的な管轄を定めたものと解釈し、神戸地裁尼崎支部への提訴について移送しないとの判断をした事例39、専属的合意管轄裁判所とは異なる法定管轄裁判所で提訴された場合において、訴訟の著しい遅滞を避け、または当事者間の衡平を図るために必要があると認められるときは、専属的合意管轄裁判所に移送せずに法定管轄裁判所において審理することが許されるとした事例40などの裁判例が存在します。これらの裁判例に鑑みれば、国内ユーザー向けの利用規約においても、専属的合意管轄条項の効力が一定の場合に否定される可能性があることは理解しておく必要があります。他方、上記の各裁判例は各事例における判断が示されたものにすぎないとも評価し得ること、一般に専属的合意管轄条項の効力自体が否定されたわけではないことからすれば、専属的合意管轄条項を定めない方針をとる必要まではないと考えられます。

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