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Ⅰ 未成年者による取引を保護するための規制 2111 最高裁平成13年3月27日判決・集民201号667頁[ダイヤルQ2事件]は、親が加入電話契約者であった電話回線から子どもがダイヤルQ2サービス(利用に応じて情報料が発生し、電話料金とあわせて加入契約者に請求されます)を利用し、加入電話契約者である親が情報料の支払義務を負うかが問題となった事案です。同事案では、「Q2情報サービスの利用が行われた場合、利用者と情報提供者との間で、その都度、情報提供者による電話を通じた情報等の提供と利用者によるこれに対する対価である情報料の支払いを内容とする有料情報提供契約が成立し」と、ダイヤルQ2サービス利用契約の当事者は、あくまでサービスを利用した子どもとダイヤルQ2事業者であると判断されています。しかし、民法は、未成年者を保護する目的で、未成年者が行った契約について法定代理人の同意を得ていないときは、原則として未成年者の契約を取り消すことができる制度を設けています(同法5条1項・2項)。他方で、同法は、未成年者の取消権が濫用されることで、未成年者と取引した相手方が不利益を被らないよう、取消権の行使を認めない制度も設けています(処分を許した財産の範囲での取引:同法5条3項、詐術を用いた場合:同法21条)。そこで、アプリ提供者は、民法の未成年者取消制度をよく理解した上で① アプリ利用者が未成年者か② 未成年者の場合、法定代理人の同意を得ているかという2点について、サービスの性質上未成年者による申込みがどの程度予想されるか、取引の対象、金額等から取消権を行使されるおそれがどの程度あるか、取消権の発生を防止するためのシステム構築にどの程度のコストを要するか、といった事情を考慮して、アプリ利用者の年齢確認および法定代理人の同意確認のために適当な申込受付のステップを検討することが必要となります。未成年者の場合、法定代理人は一般に親権者(父母)となります。アプリ上の操作によって親権者の有効な同意があったことを確認することは容易ではありませんが、一般には、「未成年の方は、保護者の方に確認の上同意をしてもらいましょう」といった画面を表示し、これに対応しようとしています。2 法定代理人の同意アプリの有料サービスを利用する取引は、携帯電話の利用契約とは別に成立する取引1であり、アプリの有料サービスに申込みをしたアプリ利用者が未成年者であれば、原則として個々の有料サービスごとに法定代理人の同意

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