率算定
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第1章第1章1概 説1 男女関係をめぐる紛争(以下「男女紛争」という。)の損害賠償請求事件においては,慰謝料(精神的損害)のみが請求されることが多いが,その慰謝料額は一定の基準に基づかず総合的に判断される(以下,一定の基準に基づかず総合的に判断される慰謝料を「非定型的慰謝料」という。)。非定型的慰謝料については,被害者側の過失や落ち度も,慰謝料額算定の減額事由として総合判断の中で考慮して,慰謝料額が算出されることが多い(【14】,【18】)。 これに対し,傷害や死亡を伴う交通事故等の損害賠償請求事件においては,慰謝料額は一定の基準に基づいて算定される(以下,一定の基準に基づいて算出される慰謝料を「定型的慰謝料」という。)ことが多い。定型的慰謝料については,財産的損害と同様,慰謝料総額を算定後に過失相殺が適用されて過失割合に応じて慰謝料額が減額されることが多い。 上記のとおり男女紛争では,非定型的慰謝料のみが請求されることが多いため,そもそも過失相殺の主張がされる例は多くはなく,過失相殺が認められた例も少ない。むしろ,原告の過失や落ち度は慰謝料額算定の減額事由として主張することが多い。今回,男女紛争で過失相殺が主張された事例を調査したところ,19件あった(なお,【11】は原告の落ち度についての主張を過失相殺の主張とも解しうると判断した事例である。)。そのうち,過失相殺が認められた事例は3件のみであった(【17】~【19】)。【19】は財産的損害と定型的慰謝料に関する事例で,【17】,【18】は財産的損害と非定型的慰謝料に関する事例である。非定型的慰謝料について,慰謝料額算定の減額事由とはせず,過失相殺を適用したもの(【17】)は1件あったにすぎなかった。 19件のうち,不貞慰謝料又は離婚慰謝料の請求事件は5件(【1】,【3】,11 概 説男女関係における過失相殺の事例分析

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