2過失相殺が認められた事例2 【19】は,クラブホステスの原告と客の被告が階段の踊り場で合意の上でわいせつな行為を行っていたところ,被告が故意によらずに原告を階段から転落させて傷害を負わせたとして治療費,休業損害,後遺症逸失利益等の財産的損害の他に傷害慰謝料と後遺症慰謝料を請求した事例である。原告が自ら選択したわいせつ行為の場所は,被告からわずかな有形力の行使であっても階段から転落するおそれがある危険な場所であることを十分に予測し得たにもかかわらず,原告は,安全な場所を選択することを怠り,その上,深酔いしていた被告に対し,わずかに帰らせて欲しいとつぶやいただけでその場から立ち去ろうと急に身体を動かしたという挙動における過失が認められるとして,原告の過失割合を7割と認め,財産的損害及び定型的慰謝料について過失相殺を適用した事例である。 【17】は,生命保険会社の従業員である原告らが,上司である被告らに宴会の席でセクシャル・ハラスメント行為をされたとして不法行為に基づき治療費,逸失利益などの財産的損害と非定型的慰謝料を請求した事例である。原告らは人生経験の豊富な中高年者であったことからすれば,被告らの行き過ぎた行動を諌めるべきであったといえるのに,被告らの上記行為を特に咎めることなく,むしろ嬌声を上げて騒ぎ立て原告ら2名においては被告らの一人を押し倒すなどしたことが認められた。このような原告らの態度が被告らの感情を高ぶらせ,セクハラ行為を煽る結果となったことは容易に推認されるとして2割の過失相殺を認めた。そして,財産的損害はセクハラとの相当因果関係がないとして認められず,非定型的慰謝料のみが認められ,慰謝料総額を認定した後に過失割合2割を控除して慰謝料額を算定している事例2第1章 男女関係における過失相殺の事例分析【5】,【10】,【14】)と最も多く,婚約不履行による慰謝料等の損害賠償請求事件は3件(【4】,【7】,【18】),婚姻詐欺による損害賠償請求事件も3件(【8】,【9】,【11】),セクハラ等のわいせつ行為や暴行被害による損害賠償請求事件は2件(【2】,【17】),傷害による損害賠償請求事件は3件(【6】,【15】,【19】),ストーカー行為による損害賠償請求事件は2件(【12】,【16】),面会交流の妨害による慰謝料請求事件は1件(【13】)であった。
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