率算定
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iはしがき 損害賠償請求において過失相殺がなされれば,賠償額が大きく削られることになります。しかし,どのような場合にどの程度過失相殺されるかについては必ずしも明らかでなく,実務家として判断に迷うことも多い分野です。 過失相殺率の算定基準を定立することは極めて困難ですが,複雑な事例も存在するなか,実際の訴訟において裁判所がいかなる要素に着目して過失相殺率を決定しているのかについて少しでも把握することができれば,有益な情報となると考えました。 そこで,本書においては,過失相殺が問題となった裁判例を広く集め,実際の裁判においてどのように過失相殺がなされているかについて分析・検討を加えることとしました。なお,一般の交通事故と金融取引の分野については,既に分析も進んでいますので検討の対象から除外しています。また,社会情勢や意識の変化等に応じて過失相殺率の判断要素・価値判断が変化すると思われるため,本書においては原則として平成元年以降の裁判例を分析・検討の対象としています。 裁判例の分析にあたっては,認定された原告(債権者)の過失割合を抽出したほか,過失割合認定の事情について理解するため,具体的な事案の概要,原被告の過失内容についても要約して抽出しています。加えて,認定された損害額についても事案把握の参考になると考え,損害として認められた額(過失相殺前の損害額),過失相殺後の損害額,既払金,認容額を抽出しました。弁護士費用については,過失相殺後の認容額の1割が認定されることが多いので,特記事項に記載するようにしました。なお,被害者が死亡している事案については,原則として被害者本人の損害として損害額を計上しています。 過失相殺に関しては裁判例も多く,分析対象となる裁判例及び分野が多数・多岐にわたり,執筆に膨大な作業が必要となったことから,広く千葉の法曹(弁護士,裁判官)に協力を呼び掛けたところ,50名を超える方々からご協力をいただくことができたので,千葉法曹実務研究会を組織し,本書のはしがき

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