事案から学ぶ 履行困難な遺言執行の実務
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4 割合的包括遺贈・清算型遺贈・相続人不存在の遺言者の序章 履行が困難な遺言執行 5 相続人不存在の遺言者が作成した遺言書において遺言執行者として指定され、あるいは裁判所において遺言執行者として選任された場合において、遺言文言によっては、必ずしも趣旨が明確でない場合もままありますが、「遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、民法951条にいう「相続人のあることが明かでないとき」には当たらないものと解するのが相当である。」(最判平成9年9月12日判タ955号142頁)とされていますので、特定遺贈と包括遺贈の違い等を検討し、遺言執行者としての権限の及ぶ範囲を見極め、遺言執行者から相続財産管理人(令和5年4月1日以後は相続財産の清算人)選任申立てをすることを検討しつつ、さらに、相続財産管理人が選任された場合の事務処理の仕方や遺言執行者との権限の関係などを考慮して、遺言執行業務を進める必要があります。 相続人不存在の遺言者が作成した清算型遺贈の場合において、不動産を売却するときの手順や登記の段取りなども、登記先例などを知っていればスムーズに進められます。 本書第4章で取り上げている以下の事案については、異論もあり得るところですが、遺言執行者の立場からいかに遺言者の意思を実現すべきか、という観点で説明しています。【事案27】 割合的包括遺贈の遺言執行者の職務【事案28】 相続人不存在の遺言者の自筆証書遺言の解釈が困難な遺言の執行について【事案29】 相続人不存在の遺言者の割合的包括遺贈の複数の受遺者の一人が先死した場合【事案30】 清算型遺贈の遺言の場合遺言執行など

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