6 序章 履行が困難な遺言執行5 その他 相続法改正により採用された配偶者居住権の遺贈については、実務的には、遺言の効力を生じた時点では、既に配偶者が認知症に罹患して施設に入居しているという事態も十分予想し得るし、その時点で配偶者が既に意思能力を欠如する状態であることもあり得ますが、その場合に遺言執行者として、どのような遺言執行をすべきか、かなり悩ましいことになります。したがって、配偶者居住権を遺贈する遺言を作成する場合には、そのような事態を予想して、予備的遺言を作成しておくべきです。 最近特に検討課題としてクローズアップされてきている問題として、逆相続、遺言の撤回、遺言書作成後に認知症により遺言能力を失った場合や20年も30年も前に作成した公正証書遺言を失念したまま死亡した場合、遺言書作成時の遺言者をめぐる状況と相続開始時の遺言者をめぐる状況とが大きく食い違うにもかかわらず、現行民法においては、遺言者死亡時の状況や遺言者の真意には到底合致しないと思える遺言書が有効と取り扱われることとならざるを得ない問題などもあります。その他にも、両親の囲い込み、遺言書と抱き合わせの任意後見契約、介護事業者や社会福祉法人を受遺者とする遺言などの諸問題もそろそろ社会問題として浮上しそうな気配が感じられるところです。
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