事案から学ぶ 履行困難な遺言執行の実務
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第2章設問1 設問1 回答1  甲の遺言によるAの推定相続人の廃除は認められますか。 甲の遺言によるAの推定相続人の廃除は認められますか。 甲の遺言によるAの推定相続人の廃除は認められますか。 甲の遺言によるAの推定相続人の廃除は認められますか。 甲は、Aの借金問題を理由として廃除しておりますので、廃除事由としては「相続人の著しい非行」が考えられます(民法892条)。しかし、推定相続人の廃除が相続権の剝奪という重大な効果をもたらすものである以上、被相続人の主観的な判断では足りず、客観的に被相続人との間の相続的協同関係を破壊する可能性を含む程度のものである必要があり、容易に認められないのが実情です。もっとも、過去の裁判例でも、息子のギャンブルのために父が多額の財産をつぎ込み、自宅まで売却したケースや、息子が成人に達する頃から約20年間にわたり、合計で2000万円以上の借金の返済を余儀なくされ、その間、息子の【事案4】 推定相続人廃除の遺言 35 被相続人甲は、長男Aのギャンブルによる借金のために、長年その返済に協力させられるなど、苦労してきた。そのため、甲は、遺言でAを推定相続人から廃除するとともに、その遺産の全てを甥のBに遺贈した。そして、甲の相続開始後、Bは当該遺贈に基づき、甲の全ての遺産を取得したところ、後日、Aを原告、Bを被告として遺留分侵害額請求訴訟が提起された。上記のとおりAは遺言で推定相続人から廃除されていたことから、遺言執行者は家庭裁判所に廃除審判の請求を行っているが、同時にBは上記遺留分侵害額請求訴訟において、Aの推定相続人の廃除を主張して、その相続権を争いたいと考えている。履行困難な遺言文言【事案4】 推定相続人廃除の遺言

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