172 第3章 民法における事情変更への対処のための規定(執行を困難又は不能にする規定)・Aが亡くなり、BとDが遺品を整理している際に、Dが、封筒に糊付けされた亡Aの遺言書を発見した。DはBに対して、裁判所での検認手続が終了するまでは開封してはならないと話をした。・Bと亡Aの関係は悪く、またBは感情の起伏が激しく、A宛ての郵便物を勝手に開封することもあったので、DはBが遺言書を開封し、内容によっては処分してしまう危険があると考え、発見した遺言書を、既に遺品整理が完了した押し入れの布団の間に隠した。・その後Dは、亡Aの遺言書が発見されたこと及び検認手続予定であることを、他の相続人であるCやEに伝えた。遺言書の保管場所を変えたことは伝えなかった。・その後、Dは保管場所(布団の間)から遺言書がなくなっていることに気付き、Bに詰問したが「知らない」というばかりであったので、Cに連絡し、一緒に遺言書を探してほしいと依頼した。・CとDは一緒に遺言書を探したが、Dは相当に焦っている様子であった。・CとEは、遺言書発見時から紛失時までの間に亡A宅に入ることはなかった。⑶ 以上のような事実関係を前提に、裁判所は、消去法的に事実認定し、Bが遺言書を破棄又は隠匿したと判断しました。・Dは、遺言書を破棄又は隠匿する機会があったが、遺言書が発見された旨を他の相続人であるCやEに話しており、またCと一緒に遺言書を探している際も相当に焦っている様子であったので、Dが遺言書を破棄又は隠匿したと認めることはできない。・CやEは、そもそも亡Aと同居しておらず、Dから遺言書が発見された旨連絡を受けてから紛失した旨の連絡を受けるまでの間亡Aの自宅に立ち入っていないし、そもそも遺言書の隠匿場所を知らなかったので、CやEが遺言書を破棄又は隠匿したと認めることはできない。 以上の事実関係を認定し、裁判所は、遺言書の保管場所(押し入れの布団の中)を探索し、遺言書を入手することができた者は、B以外におらず、
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