事案から学ぶ 履行困難な遺言執行の実務
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⑶ 本事例においても、弁護士の作成した遺言書の原案は資料として存在するでしょうから、亡き父親がそのとおりに遺言書を作成するところに長女や次女が立ち会っており、内容や形式を確認した上で封印しているわけですから、遺言書の効力が認められる余地はあると考えます。5 最後に  本設問のように、自筆証書遺言を自宅で保管する場合には、それを面白く思わない関係者が遺言書を破棄・隠匿するという事例はよく発生します。誰が破棄・隠匿したのかという点が問題ともなりますが、なにより遺言書自体がなければ結局遺言内容を実現できないのです(本事例のように、遺言内容を実現できる可能性もある事案は少ないでしょう)。 遺言書を作成するのであれば公正証書遺言とするか、自筆証書遺言を利用するのであれば最低でも遺言書保管制度を利用することが強く推奨されます。174 第3章 民法における事情変更への対処のための規定(執行を困難又は不能にする規定)る書証等がそろっている場合には、この裁判例のような事実認定も可能なわけです。

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