事案から学ぶ 履行困難な遺言執行の実務
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1 本件遺言は、特定遺贈か割合的包括遺贈か  「遺言の解釈にあたつては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたつても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」(最二小判昭和58年3月18日判タ496号80頁)とされています。 本件遺言のマンションを遺贈する部分だけを見れば、いかにも特定遺贈と読めますし、預貯金のみを取り上げても特定遺贈と考える余地があります。 しかしながら、本件遺言には、「その他」との記載があり、その文言を「その他一切の財産」と読めば、全体として包括遺贈であると理解できます。本件遺言には、他に何ら遺言事項がないので、『その他一切の財産』と解釈するのが相当であるといえそうです。 なお、割合的包括遺贈と解した場合の割合については、民法427条により、等しい割合(本事例では3名なので、3分の1ずつ)であると考えます。2 割合的包括受遺者以外の相続人も、相続債務を負担するか  もっとも、本件遺言の冒頭には、「下記のものを遺贈します」と記載するにとどまらず、「遺贈物」と表示していますので、この表現は、特定遺贈の場合の典型的な表現ですし、その対象として、不動産たるマンションを単独の条項として記載しており、それと並列する状態で「預貯金、その他」と記載しておりますので、その「その他」については、「その他の金融資産」と回答6  割合的包括遺贈についての遺言執行者の権限については、不動産に関する登記申請と財産目録の作成、そして割合的包括受遺者間で遺産分割協議が成立するまでの相続財産の管理といえます。【事案27】 割合的包括遺贈の遺言執行者の職務(割合的包括遺贈と解釈し得るか疑義がある場合) 187

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