事案から学ぶ 履行困難な遺言執行の実務
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第5章【事案32】 割合的包括相続させる旨の遺言の実現方法 249 「私の全財産のうち  3分の2を長女に  6分の1を長男に  6分の1を長男の子(養子)に相続させる」というだけの遺言だが、自宅不動産(土地建物がいずれも長男との共有)があり、被相続人が経営していた本社建物の一部(区分所有建物で遺産以外は会社所有)と敷地を会社に賃貸しており、会社株式はとっくの昔に長男に全部生前贈与していたという事案。 さて、上記遺言文言の法的性質をどのように解釈するかが課題だが、最も基本となる考え方は、平成3年4月19日の最高裁判例(民集45巻4号477頁)で、いわゆる「相続させる旨の遺言」を認知した判例である。その骨子は、次のとおり。 「特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言は、遺産分割方法の指定であって、遺言の効力発生と当時に、即時権利移転の効力を生ずる。」 では、本件遺言のごとき遺言文言(割合的包括相続させる旨の遺言)について、「相続分の指定」か「遺産分割方法の指定」かが解釈の分水嶺だと考えるが、学説としては、いずれもあり得るものの、裁判例や登記先例などはあるのか。 また、実際にこの割合的包括相続させる遺言を実現するためには、どのような手段方法あるいは段取りを検討すればよいのか。その他の事案【事案32】 割合的包括相続させる旨の遺言の実現方法

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