Column 5 長男に遺産の4分の3を、長女に4分の1を相続させ 「長男に遺産の4分の3を、長女に遺産の4分の1を相続させる趣旨の遺言」については、一般的に「割合的包括相続させる遺言」といわれていますが、これについては、相続分の指定だと考えられますので、相続人資格者間で遺産分割協議を要します。 遺産全体を対象とした割合的包括相続させる遺言であれば、遺産分割協議の中で、長女の長年の介護に報いるために、寄与分を考慮する余地はありますが、長男がこれに応じない場合には、調停不成立となり審判に移行します。 審判手続においては、寄与分主張が認められる可能性は低く、介護の苦労が考慮されないことも多いので、介護をした者が損をする、あるいは報われないのが実情です。 せめて、「遺言者の生前にその介護に尽くした者に遺産の半分を与える。」とでも記載されておればと思うのですが、そうすると今度は、「介護に尽くした者」という部分の評価・事実認定が大変難しくなり、熾烈な争いになりかねません。 人生100年時代が叫ばれる一方、認知症患者700万人とも言われる超高齢社会における遺言においては、遺言者自身が認知症を発症して遺言を書き直すことができない可能性を考慮して作成しておく必要があるといえますが、それは実はかなり難しいでしょう。 「法定相続よりも遺言が優先する」というのが平成以後の通説判例ですが、遺言者自らが遺言を書き直すことができなくなった後の事情変更に対応できるような柔軟な運用ができないものでしょうか。266 第5章 その他の事案る趣旨の遺言書作成後、遺言者が認知症に罹患し、長男が施設に入れようとしたので、長女が遺言者を引き取って長年介護した場合
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