5 お父さんが亡くなって不動産の相続登記をしようとしたら,不動産の登記名義が祖父のままだったということも少なくないと思われます。この場合,父の相続登記をする前に,祖父から父への相続登記をする必要があります(詳しくは91頁)。 ある土地や建物(不動産)が誰の所有であるのか,あるいは所有権が誰から誰に移転したかは,所有者だけでなく,その土地建物を買ったり,借りたりしようとする人などにとって重大な関心事です。そこで,ある不動産について誰がその所有権を有しているか,あるいはどのように所有権が移転しているかを,外部から認識できるようにするのが不動産登記制度です。一筆(土地の個数の単位を「筆」といいます。)の土地または一個の建物ごとに登記記録が作成され,登記記録が記録された帳簿(登記簿といいます。)を見ればその不動産の所有者が誰か,所有者がどのように移転しているかなどを知ることができます。 土地建物の所有者は,自身が所有者であることを,不動産登記によって簡単に証明することができます。また,不動産を購入しようとする人も,不動産登記によって売主が所有者であるかを確認し,購入後は登記名義を売主から移転してもらうことにより,不動産を所有者から購入したことを公に記録することができます。このように不動産登記は,不動産の権利関係を明らかにして,安心して取引ができるようにするための重要な制度です。■■■■■■■■■■■■ 不動産登記を確認すれば,誰がその不動産の所有者かが簡単に分かるということが,不動産登記制度ではとても大事なのですが,かねてより相続が開始しても,相続登記がなされず,長い間,先代の名義のまま放置されている不動産も少なくありませんでした。このように相続が開始しても相続登記されずにいると,後日,別の相続が発生した際には,相続登記手続に関わる人が増えていき,その関係者は相続が発生するたびに増加することになります。関係者の中には住所や連絡先が分からず所在不明の人が出てくるなどして,登記しようと思っても簡単に協力が得られず,余計な時間と費用を要することもあります。このため時間の経過ととともに相続登記が困難となり,ますます相続登記がなされず放置されるという悪循環に陥ることになります。 相続登記を放置した際の不利益は,その不動産について売買などの処分をしようとする際に現実化します。そのことが大きな問題として認識されることになったのが2011(平成23)年の東日本大震災でした。東日本大震災では,津波により多くの住宅が流され,第1 相続と不動産登記不動産登記の基礎知識■■■■■■■■■■■■■4
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