若特
21/42

図(達成したいゴール)を十分に確認した上で対応しましょう。解 説1 受任前に言われた場合 「絶対に」及び「勝って」の意味について弁護士と相談者間において認識の齟齬が生じないようにすべきです。裁判の結果は立証と法解釈次第で,「絶対」はありません。また,弁護士倫理の観点からも,勝訴を請け合うことはできません(弁護士職務基本規程29条2項[受任の際の説明等])。 加えて,訴訟で達成したいゴールが,勝訴判決に限らない場合もあり得ます。その意味では,達成したいゴールがどこなのかの確認もしておくべきでしょう。具体的な事案や証拠関係にもよりますが,例えば,「請求額から多少減額されても,早期に勝訴的和解を得る」とか,「判決で責任論については認容され,被告が悪いということは明らかになったが,損害論ではほとんど認めてもらえなかった」ということが「勝って」に入るのか等の理解の確認をしましょう。 その上で,絶対確実な予測をすることはできないこと,本件事案の見通し,及び,弁護士としてベストを尽くす(ことまでしか言えない)ことを説明し,依頼者として,それでもどうしても了解できない場合,つまり文字通りに絶対条件だと言う場合には,その委任を受けることは結果を保証することを意味しますから,受任できないことになります。 これに対し,あくまでも「それくらいの気持ち」だという意味であり,弁護士の説明を理解してもらえた場合には,見通しを説明した書面を渡し,同書面を委任契約書に別紙として添付する等の方法を取って書面化した上で,受任すること自体は可能です(3も参照のこと)。2 受任後に言われた場合 では,受任後に初めてそのようなことを言われたときはどうすればよいのでしょうか。 その言葉に正面から応答しようとするならば,「弁護士倫理上勝訴の保証はできませんので,絶対とは言えませんが,一緒に頑張ってみませんか」というような応答になろうかと思います。 しかし,それでも,「本当に死活問題で絶対に勝ってもらわないと困るんです。そのためにお願いしているんですから」と言われ,堂々巡りになってしまうことも考えられます。 このような場合,まずは「受任前には,人生がかかっている,絶対に勝って欲しいとはおっしゃってませんでしたが,何かご事情が変わられたのでしょうか?」などと聞いて,話される内容をとにかく「傾聴」するこ3

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る