8⑶ 判決の明らかな誤記や脱漏がある場合について 判決書を検討した結果、事実認定の誤りとか法的判断の誤りとは別に、明らかな誤記、違算の類の誤りが見られる場合があります。これらは控訴審で指摘して、控訴審判決で是正してもらえば足りる場合もあるでしょう。それで足りる場合には、控訴理由書などで指摘することになります。 一方、例えば、理由中で支払うべきものとされた金銭の額について主文に誤記があるため、仮執行宣言に基づき直ちに強制執行をしようとする場合に、速やかに正しておく必要がある場合などもあります。こうした場合や、当事者の特定事項である住所や氏名の誤記、法人代表者の誤記(これらの誤記は、第2章 控訴(附帯控訴)の提起とにしましょう。また、判決の言渡しと関連して、実務的には極めて重要なことでありながら、当事者代理人が余り注意を払っていないと思われる調書(改正法では「電子調書」といいます。以下同じ。)の証明力という論点があります。これも控訴審特有のことではありませんので番外で講義をすることにしましょう(番外講座1を参照してください(本書179頁参照)。)。 それでは講義に戻ります。 判決書を一通り熟読すれば、通常は、審判の対象について、第一審裁判所が整理した争点に基づき、どのような証拠に基づいて事実を認定し、反対証拠などをどのような理由で排斥して、最終的な判断を導いたかを理解することができると思います。第一審で訴訟代理人を務めていた弁護士であれば、恐らくは最終準備書面などを起案してから2か月程度しか経っていないでしょうから、当事者双方の主張立証について、特に自身の訴訟記録に逐一当たらなくても、判決書の記載の理解は一般には容易なことでしょう。また、第一審を担当しなかった弁護士でも、ある程度判決を読み慣れていれば、自己完結した判決書の記載を読んで、少なくとも事件の法的争点とこれに対する第一審裁判所の認定判断の構造と内容は理解できるのが通常でしょう。こうして第一審判決を通読した上で、控訴をするかどうか、控訴をして何がどう変わり得るかについて、それぞれの理解度に応じて、漠然とした、あるいはかなりの根拠と確信をもった意見を持つことができると思います。
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