控訴
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⑸ 一部控訴の検討 第一審判決に不服がある場合でも、その一部について控訴をするという選択肢もあります。複数の訴訟物に係る訴訟が客観的に併合されている場合や複数の当事者に係る訴訟が主観的に併合されている事件について、一部の訴訟物あるいは訴訟物の一部の認定判断が不服であるとか、一部の当事者との関係で不服である場合には、一部控訴を検討することになります。また、控訴提起の手数料(一審の場合の1.5倍)を調達する関係で、ひとまず訴訟物の一部について控訴し、控訴審での審理の様子を見た上で、場合によっては控訴を事後的に拡張するということも考えられます。 一部控訴の場合でも将来の控訴の拡張により、また、附帯控訴によっても、第一審判決は控訴審において変更される可能性が残されていますから、第一審判決は原則として同時に確定することになります(大判昭和7年1月16日民集11巻1号21頁)。⑹ 附帯控訴の検討 第一審判決の内容によっては、相手方が控訴をしないのであれば第一審判決を確定させてもよいという、いわば相手方の出方次第で控訴を考えるという場合もあるでしょう。そういうケースでは、ひとまず控訴をしておいて、相手方が控訴をしない場合には控訴を取り下げるという場合もあるかもしれません(法292条)。控訴の取下げには相手方の同意は不要です。あるいは、こちらからは動かず、相手方が控訴をしなければそれでよし、相手方が控訴をした場合には附帯控訴をするという選択もあることでしょう。 附帯控訴は相手方の控訴にいわば乗っかっているものですから、相手方が控訴を取り下げたり、控訴が不適法として却下されたりした場合には、附帯いものとした上で、事案の適正な解決に向けて、和解による終局を図るための選択肢の一つとして控訴審の場を推奨するということもあるでしょう。いずれにせよ、第一審の審理の集大成として示された第一審判決をきちんと理解した上で、適切な説明を加えた後に、第一審判決に対する対応を協議する必要があります。第2章 控訴(附帯控訴)の提起10

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