控訴
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i 我が国において法律実務家になったばかりの人の中で、体系的に民事控訴審についての教育を受け、あるいは自発的に学習し、更には実践的経験を積んだという人はごくごく稀であろうと思います。せいぜい司法修習の過程で、民裁修習の折に高裁の法廷を傍聴したとか、弁護修習の折にたまたま指導弁護士が担当した控訴事件を覗いたというところが関の山ではないでしょうか。民事控訴審など遥か彼方の机上の世界だったことでしょう。 ところが、晴れて実務家となり、第一審訴訟事件はまあ何とか見様見真似でやりくりできるとして、さあ、民事控訴事件を担当することになった弁護士、裁判官として、果たして何をどうしたらよいのか、途方に暮れるのが自然の流れということができるでしょう。もちろん私自身もそうでした。 本書は、そうした民事控訴審の実践経験に乏しい法律家の方々に、民事控訴審の実践的な道行きを示すためのマイルストーンを提供できればと思い、講義形式を用いて、お話をしようというものです。民事控訴審についての理論的な解説については、学者の方々の優れた著作を通じて是非学習していただきたいと思います。 私自身が実務家として過ごしてきたこともあり、本書においては、理論的な説明をすることよりも、実践的な観点でどのように民事控訴審の手続を進めるか、どういうことに注意をして訴訟活動や期日の準備をするのかということに重点をおいてお話をするつもりです。 法廷での訴訟指揮は裁判所の専権ですが、現行の処分権主義の下では、控訴事件そのものの進行の帰趨を握るのは当事者でありその訴訟代理人であることは第一審と変わりはありません。そうしたことを踏まえて、本書でも、民事控訴審の実践を学ぶためには、訴訟代理人の訴訟活動を経時的に説明する手法を採ることが適当と考え、訴訟代理人の時間軸でのマイルストーンを設定しました。 控訴審裁判官には直接見えない訴訟代理人の訴訟準備も、実は控訴審裁判官が訴訟進行を考えるに当たり、双方代理人が何をどのように考えて訴訟活はしがきはしがき

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