控訴
9/54

vント内外というところです。控訴棄却としたものが約45パーセントであることと比較すると圧倒的に第一審判決が維持されているように見えます。しかし、既済事件の中で和解によるものが約30パーセントあることを見逃してはなりません。和解により終了した事案は、和解が成立しなければ控訴棄却となった事案も数多く含まれることでしょう。控訴をしたものの、控訴裁判所からやはり原審維持と言われてやむなく分割払いなどで譲歩したというような事例もあることでしょうし、当初から和解目的での控訴であった事例も少なくないことでしょう。とはいえ、和解の中には明らかに第一審判決の全部又は一部が不当であるため取消変更を免れないという事案も少なからずあり、そうした控訴裁判所の心証の下での説得により被控訴人側が第一審判決よりも明らかに不利益な内容での和解に応じたというケースがあることは明らかなところであり、ごく大雑把な印象ですが、要するに第一審判決を全部又は一部変更するとの心証をもって臨んだ事件は、明示的に第一審判決を取消変更したものと併せれば、既済事件の2割以上に及ぶのではないかと思われます。もちろん、中には第一審が被告の欠席や公示送達の事件であるとか、訴訟代理人がついていなかったというもの、あるいは、第一審判決後に新たな主張立証がされたために第一審判決の結論を維持できなくなったという後発的事情によるものが含まれています。それでも、民事第一審判決のうち、何らかの是正を要する(もちろん、控訴審での新たな主張立証の結果というものもありますが。)事件が全体の2割以上に及ぶであろう現実はやはり真摯に受け止めるべきところでしょう。⑶ 一方、控訴審の訴訟代理人を経験した弁護士からは、多くの嘆きの声に接します。控訴代理人は、第一審判決がいかに不当であるかを控訴理由書に書き連ね、これに対して被控訴代理人は、「第一審判決は相当。」とつれなく答弁する例が多く見受けられます。いざ控訴審が始まると、控訴裁判所からは、そうした論点は棚上げされ、第一審判決の構成とは違う筋立てに基づく事実認定とこれに基づく判断の概要を示唆され、その挙げ句に、第一審では勝訴したのに高裁では敗訴となるからと強く和解を勧められ、十分に納得のいかないままに、やむなく控訴審において、第一審判決よりも不利な内容の和解をしたという話を聞くことがあります。また、いくらオリエンテーション

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る