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6第1章 ケースワーカーのおかれた状況と「支援困難事例」9) 行政管理庁行政監察局監修『行政監察三十年史Ⅴ─勧告と改善措置─』(財団法人行政管理研究センター, 1978)408~413頁するM,N両福祉事務所は,逐年被保護者がふえ,保護率が上昇している,しかし,両福祉事務所の現業員の充足率は60%台で,県下最低である。また,東京都O区は都内最高の被保護世帯を有しているが,ここにおいても現業員の充足率は低い。」などとされ,事務処理の不適切な事例として「保護決定手続きが遅延しているものは山梨,島根,鹿児島県などにみられる」との指摘もあります。9) 最近でも,厚生労働省「平成21年福祉事務所現況調査の概要」では,生活保護担当現業員の配置標準数に対する配置状況は89.2%であり,その内訳は郡部100.7%,市部88.2%とされ,配置人員が配置標準数に満たない福祉事務所は414か所であるとしています。このときの福祉事務所数は1242か所ですから,約33%の福祉事務所が標準数を満たさないことになります。次に行われた「平成28年福祉事務所人員体制調査について」でも,配置標準数の充足率が郡部103.5%,市部89.5%とされており,前回より若干改善しているものの充足数に満たない福祉事務所のあることが分かります。 ケースワーカーの担当世帯数が多くなる直接の原因は被保護世帯の増加によるものですが,被保護世帯が増加するのは貧困に陥る生活困窮者が増加したからです。社会,経済情勢,あるいはそれらの対策の不十分さなどは個人ではどうしようもない問題で,社会全体の動向の結果です。このことは,コロナ禍で生じた自営業者が廃業せざるを得ない場合や,企業の業績が悪化してリストラや雇用契約が更新されないなどにより経済的な困窮状態に陥ることと同じで,個人では避けようがありません。したがって,生活困窮に陥り,被保護世帯が増加するのは社会情勢の結果と言えます。このように被保護世帯の増加は社会経済的な問題が要因によるものですから,ケースワーカーの意欲や生活保護行政のあり方だけでは対応ができないのです。 歴史的な経過はあるものの現在問題になるのは,被保護世帯の増加に対して,地方自治体が世帯数に沿ったケースワーカーの配置を十分に行わないこ

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