7第1 担当世帯数からみるケースワーカーの業務量10) 所員の定数は,社会福祉事業法15条から社会福祉法16条で繰り下げられている。11) 社会福祉法令研究会編『新版 社会福祉法の解説』(中央法規,2022)132頁12) 厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法施行事務監査の実施について」平成12年10月25日社援第2393号13) X自治体は複数の福祉事務所を有しているが,長期入院や入所世帯を特定の福祉事務所に集めるなど福祉事務所間で意図的な世帯数調整の経緯があるため,全福祉事務所の総和とした。14) 『令和4年度福祉事務所地区担当員(新任)研修前期テキスト』(東京都福祉保健財団,2022)199頁とが挙げられます。ケースワーカーの担当世帯数については1951年の社会福祉事業法で定数として示されていましたが,2000年に社会福祉法に改正された際10)に法定数から標準の配置数とされました。これは地域の実情に応じて適切な人員配置を行うことが求められたものとされ,11)標準世帯数を超えた世帯数をケースワーカーに担当させることで,生活保護行政に支障が生じるような事態が生じてはいけないのです。このことは,厚生労働省の「生活保護法施行事務監査事項」でも職員の配置状況の着眼点に「査察指導員,現業員の不足により生活保護の適正実施に支障を来していないか」が冒頭に掲げられており,12)全国的な問題になっています。 都内X自治体13)のケースワーカーの担当世帯数の推移を見ると,1997年までは景気変動とリンクして被保護世帯数の増減がありケースワーカーの増員で80世帯の法定数を守る努力をしていましたが,2000年に社会福祉事業法(現・社会福祉法)改正により法定数から標準数とされたことで,自治体当局から担当世帯数を80世帯以下にするインセンテイブが失われ,80世帯が形骸化したことが分かります(【表1】)。また,全国の保護率とケースワーカーの担当世帯数が関連していることも分かります。X自治体を含めて,島しょ部を除く東京都内の福祉事務所の推移をみても2000年以降のケースワーカーの担当世帯数は標準を超えたものとなっています(【表2】)。都内では標準数を満たす福祉事務所は2022年度では73か所中5福祉事務所にすぎません。14)この傾向は大都市部を中心に全国的に同様と思われます。
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