第3支援の内容第31 居室内訪問による現状の把握 ケースワーカーとしては前任ケースワーカーに言われた自宅の清掃を進めようと思いましたが,まずは数年来実現していない自宅内訪問と室内状況の確認を行いたいと考えました。 そのため,ケースワーカーは窓口での保護費支給の際,家庭訪問を行いたい旨の話を重ねました。当初は「何か困りごとがないか自宅でゆっくり話をさせてほしい」「自宅でどのように過ごしているかを教えてほしい」とソフトに依頼していましたが,「必要ない」「大丈夫」として訪問を拒否するばかりのAさんであったため,「生活保護の適正実施のため,自宅内を確認させてほしい」「室内訪問させてもらえなければ保護の継続が困難となる可能性がある」などと強い言葉を掛け,ようやく居室内への訪問が実現しました。 強い言葉での訪問依頼となったのは,不衛生な状況の実地確認もありましたが,年2回の居室内訪問がなされていないことを厚生労働省や都道府県による指導検査で指摘されることを避けたい,との思いもケースワーカーにはありました(厚生労働省の実施要領では少なくとも1年に2回以上の家庭訪問が定められています。)。 昼間でも薄暗いAさん宅の室内は物が散乱し,悪臭を放っていました。万年床の布団は真っ黒に変色し,所々黒くシミがあり,臭いからは失禁している様子も見受けられました。また,台所は使用済みの食器やアルコールの空き缶,食べかけの総菜などが乱雑にあふれ,床に置かれた鍋を開けると一面81事例1 アルコール問題が疑われる人への支援に対応しなければならないこと,栄養状態不良のAさんの様子などにケースワーカーは困りました。さらには,それらをAさんに「心配だ」「一緒に解決しましょう」と伝えても「大丈夫」という答えしか返ってこず,Aさん自身がこれらの状況に困っていないということにケースワーカーは頭を抱えました。
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