4 繰り返される救急搬送と短期入院への対応とその苦労 ある日,Aさんは路上で倒れて救急搬送され,「十二指腸潰瘍」との診断で数週間入院しました。その退院後もAさんは救急搬送と短期入院を繰り返し,あるときはケースワーカーが訪問した時に部屋で倒れているAさんを見つけ,救急車を要請しそのまま同乗したこともありました。このときは,ケースワーカーは救急隊や搬送先病院でAさんの家族と勘違いされ,そのたびに身分を明かして経過を伝えましたが,家族以上のことをしている気がして内心疲労を感じていました。 入院を繰り返す中,2か月以上の比較的長期の入院となった際にAさんの了解を取り,要介護認定と退院に備えての居室内清掃を行いました。このときの清掃は介護保険制度のホームヘルパー派遣の対象外となる大掛かりなものとなり,生活保護での費用支給も困難でした。そのため,被保護者自立促進事業(生活保護とは異なる東京都独自の援護金)を利用して業者に清掃を依頼し,その清掃前にはケースワーカーと入院先の医療ソーシャルワーカー(MSW)がAさんの一時外出に同行し,自宅内の状況を何回か確認しました。 さらに入院時には入院先のMSWよりAさんの飲酒による問題が指摘されました。これまでの「十二指腸潰瘍」は飲酒が原因であること,入院治療しても退院後,再び飲酒することでAさんは再発を繰り返していること,飲酒を改めなければ同様のことを繰り返し悪化していくばかりであること,アルコール依存症の疑いで専門医への相談が望ましいこと,などがAさんへ厳しく指導されました。 入院先にはアルコール依存症を診られる診療科がなく,ケースワーカーはMSWとともにアルコール依存症専門病院への相談をAさんへ指導しました。しかし,Aさんにその意思はなく,退院すると食事をほとんど摂らずに発泡酒を飲むという生活を続けました。5 音信・交流が途絶えていた親族への協力依頼 ケースワーカーは,交流が途絶えていた別居しているAさんの弟へも協力83事例1 アルコール問題が疑われる人への支援
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