14_支保
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おわりに214ワークが,違法な申請抑制等の要因の一つとなっているのではないでしょうか。 オーバーワークの弊害は事務処理だけの問題ではありません。第3章でも被保護者への支援に支障が生じることが指摘されていますが,ケースワーカーの孤立や歪んだ被保護者観を生む要因ともなります。 筆者がケースワーカーの時の経験ですが,支給された保護費を飲酒に使ってしまったため,保護費の追加支給を求めてきた被保護者がいました。筆者が事情を聞こうとすると「ケースワーカーなんだからポケットマネーを出せ」と凄みます。それを断ると顔に唾を吐きかけられました。また,病院内で看護師にわいせつ行為を行い強制退院となった被保護者は,数日後来所し「入院させろ」と大声で騒ぎました。この他にも,一時扶助をギャンブルで使ったうえで再支給を要求したり,鞄に入れた包丁を見せながら「保護費を数か月分前貸ししろ」等と言われたこともあります。 このようなことは,ある程度のケースワーカー歴のある方ならば経験しているのではないでしょうか。もちろん,極一部の被保護者による行為ですがケースワーカーの大きなストレスとなり,生活保護に対する不全感を抱かせる要因となります。本人なりの事情や福祉事務所側も検討すべき問題はあるかとは思いますが,このようなときに当該ケースワーカーの気持ちを同僚のケースワーカーや査察指導員がきちんと受け止め,感じている理不尽さを理解して相談や話し合うことは必要です。しかし,ケースワーカー全体が過重な世帯数を担当させられオーバーワークの状態では自分の業務を行うことに精一杯になり,福祉事務所内での相互のフォローが行えないことが生じます。そのため,ケースワーカーは孤立し,精神的負担が積み重なるとともに,誤った被保護者観を醸し出す要因になりかねません。また,冷静な判断ができず事態がより悪化することもあります。 ケースワーカーの役割,生活保護ケースワークについても「支援困難」の事例を基に検討を行ってきました。現在の生活保護行政での自立は,就労自立,社会生活自立,日常生活自立と整理されています。どのような自立を目

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