14_支保
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おわりに216 研究会では,ケースワーカーが実際に困り,悩んでいる事例について分析と支援のあり方を議論し,具体的な支援方法の検討や,ときには研究会で検討された支援方法や方針がその後,実際にどのように行われ,どのような結果となったのか等の報告を受け,さらにその検討も行っています。また,ケースワーカーの役割,生活保護におけるケースワークについても毎回議論となりました。 このような検討を進める中で,「支援困難事例」とは,被保護者側だけでなく支援を行う福祉事務所や関係する支援機関の組織的問題,あるいはケースワーカーや査察指導員,管理職,関係する機関の支援者自体にも問題がある場合もあることがわかってきました。 つまり,被保護者の問題だけに焦点を当てても「支援困難事例」の課題の解決には至らない場合もあり,「支援する側」についての検討も必要ということになります。さらに,制度自体が課題解決の阻害要因となっている場合もあります。 本書は刊行までにかなりの時間を要しました。その原因は筆者の考えの揺れにあります。研究会では,毎回真剣な中にも和気あいあいと事例検討の議論が行われましたが,その議論に参加する都度,ケースワーカーの苦労と悩み,被保護者の生きにくさと辛さ,ときには査察指導員や管理職のケースワーカーや被保護者への理解(あるいは無理解),関係機関の積極的な支援と協働(あるいは無関心と無責任,責任転嫁)を感じ,その背景,原因を検討することで,「支援困難事例」「ケースワーカーの役割」の深刻さと重要性を考えることの繰り返しとなり,原稿が前進,後退の連続となりました。 本書の刊行に当たっては支援困難事例の研究会に参加しているケースワーカーを中心に各地のケースワーカーの方から「支援困難事例」の支援報告をいただきました。また,各地の研修や研究会でのケースワーカーや査察指導員の皆さまとの議論も大変参考になりました。本書は生活保護行政の最前線にいるケースワーカー,査察指導員の皆さまの実践の中から生まれたものといえます。

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