iはじめに 筆者は福祉事務所で約30年間生活保護ケースワーカーや査察指導員として,生活保護行政に携わってきた経験から,生活保護の仕事はやりがいのあるものと感じています。しかし,福祉事務所から大学に移籍した後,各地の自治体の研修講師や研究会等に参加させていただく機会が増えケースワーカーと話をすると,生活保護ケースワーカーだけはやりたくないとの声を多数聞くようになりました。 筆者が福祉事務所にいた頃にも,生活保護ケースワーカーはやりたくないという声はありましたが,近年はより強くなっているように感じています。 ある県での新人ケースワーカー研修では,かなりの人数の受講生がいましたが,ケースワーカーの仕事にやりがいを感じることはなく,早く異動したいとの声ばかりでした。休憩時間に話を聞くと「職員にケースワーカーの希望者がいないので新規採用職員に押し付けられ,3年我慢するように言われています」とのことでした。別の地域では研修終了後の懇談会がありましたが,少なくない人たちから「こんな仕事は本当はやりたくない」,「早く異動したい」と言われました。小規模の福祉事務所の研修では,経験が数年あるケースワーカーや査察指導員が「ケースワーカーを希望する人なんかいるわけがない」「仕方ないので異動まで我慢している」等と口々に発言するので,新人ケースワーカーがどのように感じているのかが気になりました。 この他にも社会福祉士として福祉職で採用されたケースワーカーが,数年経つと福祉事務所から異動するか退職したい,事務職に移りたい等と発言することを何回も聞いています。 全国では仕事にやりがいを感じているケースワーカーも少なからずいるとは思いますが,このような気持ちを持つ人が増加しているように感じています。 その大きな原因に,ケースワーカー=生活保護行政のオーバーワークともはじめに
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