14_支保
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はじめにiii【支援困難事例とは】 筆者は「支援困難事例」とは,ケースワーカーのオーバーワークとその業務の未整理,さらに支援施策の不十分性から生じていると考えています。これらにより,被保護者の生活課題の大きさに対し支援する側の支援力が対応できずに支援困難が生じているのではないでしょうか。 これらは「専門職」や社会福祉士を導入すれば解決する問題ではありません。ケースワーカーに専門性は必要ですが,社会福祉士に生活保護行政の専門性があるとは限りませんし,専門性の問題を資格や「職」の問題に転嫁してはいけないと思います。 生活保護行政にはケースワーカー・査察指導員のオーバーワークという大きな問題があり,福祉事務所現場ではそちらの方にどうしても目が奪われがちですが,「支援困難事例」とは,オーバーワークも含めて現在の生活保護行政のより本質的な課題を現しているように思われます。 そこで本書では,これらについてケースワーカーをめぐる生活保護行政の経緯と,生活保護行政で「支援困難」といわれる被保護者に対する支援を軸に,生活保護ケースワークとケースワーカーの役割について検討することとしました。 本書は,「支援困難事例」のHow Toやマニュアルを示したものではありません。様々な人が人生を送る中で貧困や不遇な環境により生じる「生きにくさ」や複雑で難しい課題を単純に類型化して「解決」策を示しても,生活家族同様の対応をケースワーカーに求められる場面が多数生じているのです。 筆者がケースワーカー,査察指導員のときにも行政機関を含めた関係者から同じような要求をされたことがかなりあり,ケースワーカーの業務範囲についての整理がされていないことを感じていました。つまり,ケースワーカーの業務とは何なのか,その範囲はどこまでかが明確になっていないということであり,このことは生活保護ケースワークの意義と範囲が明確になっていないことから生じているように思われます。

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