1■はじめに2■日本の現状と「遅れ」の原因─元凶としての政治分野第1章⑴ 国際指標から見た日本の現状─GGI2022年度世界116位の現実3第1章 日本のジェンダー平等の現状と「遅れ」 ジェンダー(gender)とは,身体的(生物学的)性差/性別(sex)と区別された社会的・文化的性差/性別を意味する言葉として定着してきたが,その概念は多義的であり,時代によって変化している。近年では上記の二分論を超えて「性差/性別についての観念・知識」のように広く定義し,性差間の関係性を分析する概念と解することが一般的である。1)性別についても,身体的性別,性自認,セクシュアリティ,性的指向など多様な要素を組み合わせて捉えるようになり,性的マイノリティ(LGBT)を含める点で男女二元論も超越されつつある。 日本では男女共同参画社会基本法(Basic Act for Gender Equal Society:1999年)で「男女共同参画」を「Gender Equality」と訳したことから,「ジェンダー平等」を「男女共同参画」と同義に用いる傾向がある。本書では,「男女共同参画」より広義である点を留保しつつ,「ジェンダー平等」を「性差/性別における平等(差別の禁止)」として捉えておく。また,ジェンダー法学会設立趣意書2)が明示するように,ジェンダー法学の対象には身体的性差と社会的・文化的性差の双方が含まれることを前提として,司法におけるジェンダー平等の現状と課題について検討する。 特に本章では,総論として日本の現状と課題を明らかにするため,ジェンダー・ギャップ指数(GGI)において世界ワーストテンの位置にある政治分野の構造的問題,及び,司法分野の特徴と対応策を検討する。① 世界経済フォーラム(WEF)のジェンダー・ギャップ指数(GGI2022)で日本は146か国中116位である(図表1─1参照)。3)一見,前年(2021年,日本のジェンダー平等の現状と「遅れ」
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