平等
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5第1章 日本のジェンダー平等の現状と「遅れ」⑵ 政治分野の「遅れ」の原因 日本のジェンダー平等の「遅れ」の原因は,社会全体の性別役割分業構造と性別役割分担意識にあるといえるが,政治分野では特に下記の点が指摘できる。① 諸外国で多用されているクオータ制などのポジティブ・アクション(積極的改善措置,以下「PA」という。)の欠如。これは国際研究機関IDEAの調査結果に示される。5)憲法・法律・政党綱領のいずれかでジェンダー・クオータ制を導入している国は世界で136か国に及ぶが,日本では実施されていない。② 政権交代を伴わない保守政治の継続,1955年体制後のジェンダー平等政策の消極性。これは,直近の2021(令和3)年10月衆議院選挙と2022(令和4)年7月参議院選挙における与党自民党・公明党の女性候補者率の低さに端的に示される。6)③ 地方議会・地域政治における女性議員比率の低さ。2021(令和3)年12月末現在では地方全体の女子議員比率15.1%,特別区議会30.7%,政令指定都市議会20.7%に対して,市議会全体16.8%,町村も都道府県11.8%程度である。7)女性は生活に身近な教育・環境・消費等に関心が高いといわれる言説が事実であれば,地方政治で女性参画が遅れているのは矛盾であろう。ジェンダーについての固定観念・偏見(ジェンダー・バイアス)や固定的な性別役割分業意識・構造が背景にあると思われる。地方政治の非民主的実態や両立支援等の課題を明らかにして具体的取組を進めなければならない。④ 「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(候補者男女均等法)8)」及び第5次男女共同参画基本計画における政治分野の取組の消極性。これらの法規にはクオータ制や政党助成金を用いたPAの導入が明記されず,法律の拘束力・強制力が欠如している。諸外国では政府の手でクオータ制を成立させることも多いため,政府と立法府が積極的にPA推進立法による改善策を推進することが望まれる。 総じて,日本社会の中の性別役割分業構造・分担意識,選挙制度や三バン(カバン,地盤,看板)政治に由来する構造的・制度的課題を指摘せざるを得ない。

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