平等
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4■今後の課題7第1章 日本のジェンダー平等の現状と「遅れ」⑴ ジェンダー法学研究・教育の促進 欧米のフェミニズム法学(Feminist Jurisprudence)からジェンダー法学(Gender Legal Studies)への展開17)の中で,ジェンダー法学の目的も明確になってきた。①司法や法学,公共政策,立法等におけるジェンダー・バイアスを発見して批判的に検討すること。②発見したジェンダー・バイアスを中心にジェンダー平等の現状の理論的課題を分析し,「理論化」すること。③ジェンダーの視点から既存の学問研究を再検討・再構築すること。④ジェンダー視点からの研究成果を,ジェンダー法学等の新たな学問分野として確立すること。⑤ジェンダー法学研究の成果を積極的・主体的に訴訟支援などの法実践に活かし,政策や立法の提案を行うこと。⑥ジェンダー・センシティブな法曹を養成・教育し,そのための制度や教材開発を行うこと,である。18) 今後は,司法過程をジェンダー・センシティブにするため,大学・法科大学院・司法研修所・弁護士会等,法曹養成・実務過程でのジェンダー法学研究・教育の一層の促進が急務である。⑵ 憲法的視座との接合 本書では,第2部で民法・刑法等の諸法律との関係が論じられるが,実務の世界では憲法に言及されないことが多い。夫婦別姓訴訟や同性婚訴訟などの憲法訴訟では憲法13条,14条,24条等の検討は不可欠であり,憲法研究者の意見書提出のほか,実務内部での憲法の検討が重要となる。憲法訴訟以外でも,違憲立法審査制がある限り適用する法律自体の合憲性が常に前提になるはずである。憲法14条だけを見ても,間接差別の問題やポジティブ・アクション(PA)の違憲審査基準など,学説でも十分に検討されていない理論的課題も多い。このため実務家と研究者の連携によって,憲法的視点に立ったへのアクセス障害という面で発現する場合,に分けて検討している。15)全体として,性に基づく役割分業意識や固定観念の存在が個々の人権に重大な影響を及ぼしていることが指摘される16)が,20年後の今日でも変わりはない。司法過程に潜在する性差別意識や性別役割分業構造を変えることが急務となる。このため,以下に今後の課題や対応策を列挙しておくことにしよう。

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