相ポ
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4 第1編 遺産分割3 金融機関への預金取引経過の開示請求ことができる。金融機関は、預金契約に基づき、預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。最判「預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる」(最一小判平成21・1・22民集63・1・228、田中秀幸・最高裁判所判例解説 民事篇(平成21年度)54)ただし、解約が直近で銀行からの元預金者への報告が未了の場合は、開示を求めることができると解する余地がある(民645、656)。高判「預金の増減とその原因等について正確に把握し、事務処理の適切さを判断する必要性は、確定した解約残高に至る過去の契約期間についてのみ存在するから、その後も元預金者の請求があれば、いつでも事務処理を報告しなければならない必要性があるとは言い難い。委任契約や準委任契約においても、契約終了後は、受任者に、遅滞なくその経過及び結果を報告すべき義務があるにとどまり、委任者が、引き続き、いつでも過去の委任事務の処理の状況の報告を求められるわけではない(民法645条、656条)。預金契約についても、銀行は、預金契約の解約後、元預金者に対し、遅滞なく、従前の取引経過及び解約の結果を報告すべき義務を負うと解することはできるが、その報告を完了した後も、過去の預金契約につき、預金契約締結中と同内容の取引経過開示義務を負い続けると解することはできない。」(東京高判平成23・8・3金法1935・118、渡辺隆生・金法1935・4)⑴ 預金が解約されていない場合使途不明金追及等のため、相続人から金融機関へ取引履歴の開示を求める⑵ 預金が解約されている場合既に預金が解約されている場合、相続人から開示を求めることはできない。

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