はしがき i本書は、遺産相続を扱う弁護士等を主な対象とし、実務上、知っておくべき判例をまとめたもので、前著「弁護士のための遺産相続実務のポイント」「法律家のための遺言・遺留分実務のポイント」の姉妹編です。本書は、判例を「研究」するというよりも、実務の現場で判例を適切に「適用」できることを目的としています。我々実務家にとって、実務で直面する問題の唯一の解答は、判例です。その判例を肯定するにせよ否定するにせよ、判例を知ることが前提です。本書では、全体を、遺産分割・その他の相続手続・遺言・遺産分割付随問題の4編に分けるとともに、各編で、実務上、問題となる論点をほぼすべて網羅し、それに対応する判例を掲載しています。ふさわしい判例のない論点は、国税庁や法務省の通達等を記載し、これ一冊で、すべての問題点に対応できるようにしました。また、法令や判例では、適用基準として、しばしば「特別な」とか「著しい不公平」、「法の趣旨」「虐待または重大な侮辱」といった抽象的な基準が用いられます。しかし、実務においては、このような抽象的な基準だけでは、直面する個々の具体的事案に当てはめ解決しようとすると判断に悩むことが少なくありません。このような事案については、できるだけ多くの判例を把握し、判例全体の「流れ」や「傾向」を分析するしかありません。本書は、このような実務家の現場での悩みに答えるため、同一論点について、できるだけ多くの判例を掲載することで、「判例全体の傾向」がわかるように努めています。同時に、法律の解釈は絶えず時代に合わせて変動するので、重要な過去の判例でも、現在では、すでに通用しない判例が多くあります。本書では、その旨を指摘してあります。本書は、近年の民法、家事事件手続法、不動産登記法等の改正にも対応し、立法化された判例、立法により変更された判例も併せて解説してあります。はしがき
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