在施
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2 はじめに1 専門職後見人等の役割新しい成年後見制度は,介護保険法とともに,平成12年4月に,「高齢社会への対応および障害者福祉の充実の観点から,判断能力の不十分な高齢者や障害者にとって利用しやすい柔軟かつ弾力的な制度を設計するという事務的要請とともに,自己決定の尊重,残存能力の活用,ノーマライゼーション等の新しい理念と従来の本人の保護の理念との調和を図るという理念的要請に応えるため」に構築された1)。そして,「被後見人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態および生活の状況に配慮しなければならない(民法858条,保佐人・補助人の場合も同じ。民法876条の5第1項,876条の10第1項)。たとえば,高齢者施設への入所契約を結ぶ場合,必要な情報を集め被後見人に説明し,その希望を尊重して施設を選び,契約の締結や費用の支払いを行い,入所後は,きちんと契約どおりの世話がなされているかどうかをチェックし,必要なサービスについて被後見人の希望を聞いて,施設側と交渉することも含まれる。……介護契約の履行のチェック,本人の意思・希望の反映など,財産管理の域を超える。それは本人の生活,療養看護を見守り,個人としての生活を支援し,その質を確保する役割である2)」。1)二宮周平『家族法』265頁(新世社,第5版,2018年)2)二宮・前掲注1)273頁このように,専門職後見人等は,本人の尊厳保持・権利擁護のために,本人の自己決定(自宅か施設かの選択,利用するサービスや事業所・施設の選択等)を尊重し,サービスを利用した場合には,サービスが適切に提供されているかをチェックし,最期まで快適に生活できるように支援していく必要がある。専門職後見人等は,事業所・施設任せにするのではなく,介護保険法令等を十分に理解して,サービスの質のチェックとともに,質の向上につながるように事業所・施設に対して意見していくべきであろう。また,専門職後見人等は,本人が自宅で最期まで快適に生活できるよう支援していくために,地域共生社会や地域包括ケアシステムの必要性を理解して,地域ケア会議等に積極的に参加するとともに,地域の社会資源の一つとしての役割をも担うべきであろう。

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