在施
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22 第1章 介護保険制度についてしても,主治医の意見や前年の認定調査の結果等を参照し,必要があれば,更に情報収集に努めるなどの対応がされるべきであったといえる(略)。現に,認定要領においては,時間や状況によって,同じことができたりできなかったりする場合があることをも念頭に,日頃の状況を把握するために主治医の意見等を参照する必要があることが指摘されているところである。」(前掲・名古屋地裁平成30年3月8日判決)が参考になる。当該認定調査において,調査員は,「短期記憶5)」について,次のように特記事項を記載した。「・短期記憶 直前のことを聞くも曖昧で,3点テストを実施するも記憶されていなかった。」この点について,判決では,「具体的に,要介護認定等基準時間に影響し得た主要な要素について個別に見ると,短期記憶について,認定調査においては3点テストを含めて問題がなかったにせよ,平成27年当時には問題があるとされており,平成28年においても主治医の意見は『問題あり』と5)同判決では,「認定調査票における短期記憶とは,面接調査日の調査直前にしていたことについて把握しているかどうかを意味する。」とし,すなわち,「調査直前に行ったことについて確認する方法が奏功し難い場合には,『ペン』,『時計』,『視力確認表』を見せて何があるかを復唱させ,これらの三つの物を見えないところにしまって何がなくなったかを問うので覚えておくように指示し,5分以上してからこれらの物のうち二つを提示し,提示されていないものについて答えられたかを確認する(3点テスト)」ものとした。ク 名古屋地裁平成30年3月8日判決同判決は,「原告が,介護保険法(以下「法」という。)27条1項に基づく要介護認定に係る申請をしたところ,名古屋市G区長(以下「G区長」という。)から,平成28年4月11日付けで非該当とする旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,本件処分は原告がアルツハイマー型認知症のために要介護1相当の状態にあるのを看過してされた違法な処分であるとして,本件処分の取消しを求めるとともに,要介護1の認定の義務付け(いわゆる申請型の義務付けの訴え)を求める事案」であり,取消しを認容したが,義務付けは棄却した事案である。なお,同判決では,平成27年の要介護認定は要介護1であった。

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